大阪の建築(その1)

大阪に来た目的その2は建築探訪です。
大阪(関西)の建築で はずせないポイントは2つ。
文化発祥の地(東京より東の方々には悪いのですが)なのでイイ建築が多い。

ポイント1:とりわけ関西には古いイイモノが多い。
歴史上、奈良をはじめ、京都の庭、神戸・大阪の近代建築が量・質とも充実してます。
これは誰でもご存じ。

ポイント2:民間の建物で見るべきモノが多い。
東京は、官発注の公共の建築にみるべきモノが多いのですが、
関西とりわけ大阪には
民間で質が高い建築が明らかに東京より多い。

また 力を入れたポイントや 作風 が東京とは違うので面白いのです。
例えば日建設計竹中工務店、坂倉建築研究所とも東京大阪に設計の拠点を置きますが
いずれも同じ組織の中で作風が異なる。むしろ組織を超えた東京の作風、大阪の作風の方が強いと僕はみるのです。

その理由は 建築家のプロフィールと 
クライアント(お施主さん)が違うので 建築に対する考え方が違うことにあると考えます。

まず、建築家のプロフィールから

もともと、東京で活躍している建築家の経歴をみると圧倒的に東大出身
(工部大学校、帝国大学東京大学)。
その東京大学の設立を考えると官に奉仕するための学校ですよね。

一方、関西で活躍した建築家は、あまり学歴の傾向は強くない
(強いていえば京大が多いのでしょうが)。

大阪出身で世界的建築家といえば「安藤忠雄」です。
ご承知の様に安藤さんは、建築の正式な教育を
受けず独学で建築を学んだと自他ともに認めている。

安藤さんはきわめて特別なのですが、大阪では東大を出た建築家というだけでは
仕事はこない。
「儲かる建物」かどうかということをクライアントは求めているし、
その期待に沿って建築をまとめて、
完成した後も、クライアントと良好な信頼関係を維持して
また同じ施主からお仕事をもらうという商売の仕方なのです。

東京は大企業でもトップはサラリーマン社長、
関西は最近はそうでもないけどオーナー社長が多い。
イイ意味でのパトロンがいるわけです。
建築家も心得ていて、自己満足だけの建築雑誌の表紙を飾るような
独創的な見栄えだけを追求するようなバカなことはしないしできない。

僕の好きな 村野藤吾さん がその典型です。
東京の方は名前は知らないかもしれませんが、
日生劇場、有楽町そごう(現ビックカメラ)や
新高輪や箱根プリンスホテルを設計した建築家です。
商業建築のチャンピンなわけです。
佐賀県唐津の生まれで早稲田大学で電気から建築に編入して建築を学び、
大阪の渡辺節のもとで修行し独立。
90才を超えて亡くなるまでゴルフと鉛筆(設計)は現役だったという
建築家の鏡の様な方です。

活動の主体は大阪で 関西に沢山の作品があります。
僕は大阪に行くたびに 村野作品と会っています。 
お土産は心斎橋そごうで買い、疲れたら心斎橋や戎橋のプランタンでお茶するとか 居心地のいい空間を味わってきました。

が村野さんが亡くなって二十数年たち このところ
作品が取壊しの憂き目にあっています。
そごう もプランタンも もうありません。

あるうちに見ないとマズイ。
特にみていないもの。

村野藤吾さん自身の事務所です。
心斎橋と阿倍野の二カ所あって とてもみたい作品でした。

が調べて見ると心斎橋は そごうと一緒にすでに取り壊され
かろうじて 阿倍野は残っているようです。

折角の機会なので 思い立ちました。
ネットで調べると 
天王寺駅の南側のラブホテルもある雑然とした住宅地にひっそり建っている」
というコトが分かりました。
住所は「阿倍野区」まで。

1時間半しか時間がなかったのですが、
兎も角 天王寺駅で降りて 
普段は尋ねない交番でおまわりさんに写真を見せて
「村野さんという人がやっていた設計事務所の建物を探しています。
 こんな外観の建物です。場所は天王寺駅の南しかわからないのですが・・・」
「うーん、阿倍野区ですか。ここは天王寺区近鉄天王寺駅の南側からが
 阿倍野区なのでその辺で調べてみたらどうですか・・・」
「はー わかりました。ありがとうございます」

少し気落ちするも 
近鉄駅の南側(裏側)に回る。ほとんど特徴のない住宅地
あーこれは。。。と思って歩くこと30分
もう時間かなー 折角きたのに 焦る。。。
バイクで走る〒の人が あっそか! (閃く)
詳しいかも ダメ元で聞いてみよう
「お仕事中すいません。こんな建物を探しています。ラブホテルの近くにあるようなんですが・・・」
「僕が見た似たようなのは あそこの角を左に・・ある。隣の駐車場もこんな感じ・・・」
「ありがとうございます!」

JPの人はすごい。なんと的確な道案内
すぐに発見。

はい、この玄関です。
柳ごしと思ってましたが、楓こしのアプローチです。
このエクスパンドメタルを切り抜いた門扉!
その向こうには 中庭がうっすら見える・・・
おおー
来た来た。(憧れの君に初対面し嬉し恥かし)

向かいの広大な駐車場から引いて見ると

なんだ〜普通の建物じゃん!
と言う方もいるかも

いえいえ 
一見すると ごく普通にみえるところが曲者なのです。
じっくりみると ものすごく考えられているのです。
じゃー どう考えられてるの?
「飽きないんです。何回でも来てみたくなる」様に設計させているです。
なんたって 商売の基本は アキナイですから
(ダジャレわかります?)

これが村野藤吾のすごいところです。
残念ながら言葉では説明できないのです。

だから 実際に会って 味わうしかないのです。

これが 関西 大阪の建築の 魅力です。

返す返す言葉や写真ではお伝えできないのが 残念ですが・・・

これで会ってみたくなった としたら
あなたも大阪の建築通の資質が十分あります。

では
次回も大阪の建築で